山梨大学パワー半導体デバイス研究室

Kofu,,  Yamanashi 
Japan
  • 小間番号1303

 近年パワー半導体デバイスにおいて、Si(シリコン)より物性値の優れたSiC(シリコンカーバイド)を用いることにより、高速、低損失トランジスタが実現され、既にショットキーダイオード、MOSFET、JFET、接合型バイポーラトランジスタ(BJT)が市販化されている。しかしながら、SiC-MOSFETはSiO2/SiC界面において欠陥準位が多く存在し、ゲート閾値の変動やチャネル抵抗の増加などの問題がある。

我々は、酸化膜を持たないデバイスとして、SiCの埋め込みゲート型静電誘導トランジスタ(Buried Gate Static Induction Transistors : BGSITs)の開発に従事している。SiC-BGSITは、チャネル層にストライプ状のp+ゲート領域が埋め込まれている構造となっており、接合型FET(JFET)に類似する機構で動作する。埋め込みゲート構造のため電極形成時のアライメントマージンが発生せず、サブミクロン微細チャネルが形成可能、チャネル部に絶縁膜界面ではなく、バルクそのものを利用しているため信頼性が高い。山梨大学は産総研との共同開発により、独自の製造技術および徹底したデバイス設計によりノーマリーオン型およびノーマリーオフ型両方のSiC-BGSITを開発し、700〜3300V級でSiC物性限界に近いの超低オン抵抗を得ることに成功している。短絡耐量試験によりSi-IGBTの2倍程度の短絡エネルギー密度も実証した。

SiC-BGSITの課題は、ゲート-ソース間がpn接合であるために、ゲート閾値が低い問題を持っている。2.5V以上のゲート電圧を印加すると顕著なゲート電流が流れ、結晶欠陥の原因になるため、ノーマリーオフ型の場合しきい電圧は1V前後で、2.5V以下でゲート駆動をすることが要求される。従ってSiパワーMOSFETやIGBTと比較しノイズマージンが低い。

上記問題を克服するために、近年SiC-BGSITカスコード素子の検討も始めている。カスコード接続とは高耐圧ノーマリオン型SiC-BGSITと電流制御用のSi-MOSFETを直列接続、すなわちカスコード接続する。回路動作は、オン状態の動作時はSi-MOSFETのゲートにオン閾値電圧以上の電圧を印加するとSi-MOSFET、SiC-BGSITは共にオン状態であり、SiC-BGSITカスコード素子は導通する。一方、Si-MOSFETのゲートに電圧を印加しない状態ではSi-MOSFETはオフ状態となり、Si-MOSFETのドレイン-ソース間に電位差を生じさせる。この際、SiC-BGSITのゲート・ソース間には結果的に負電圧が印加され、この負電位がノーマリオン型SiC-BGSITのオフ閾値電圧を下回るように素子設計すればSiC-BGSITがオフ状態となり、電流を阻止するようになる。従って両デバイスともにオフ状態となり、SiC-BGSITカスコード素子全体としてノーマリーオフ動作をする。また、ゲート駆動はカスコード素子中のSi-MOSFETのゲートを駆動することになり、従来のパワーMOSFETやIGBTのゲートドライバーをそのまま使用することが可能である。さらにカスコードデバイス中のSi-MOSFET構造中に組み込まれているボディーダイオードが使用可能である為、これを利用した逆導通動作が可能である。従って外付けフリーホイールダイオード(FWD)が必要無く、チップ実装面積を低減できる。

 このように、SiC-BGSIT素子ファミリーは超低損失および高信頼性の性能により、その応用とはインバータや電源回路などの電力変換器への応用が期待されるだけでなく、パルスパワー分野への応用展開も可能である。パルスパワーとは、時間的に高度に圧縮されたエネルギーのことであり、核融合や電子加速器などの科学基盤技術だけでなく、レーザーやプラズマの生成、燃焼機器や医療への応用などの産業分野にも利用されている。従来、パルスパワーを発生させるために、高速スイッチングが可能なサイラトロンが用いられていたが、安定性や寿命の点で問題があった。近年の半導体技術の進歩からパルスパワー用途でサイラトロンに代わって半導体スイッチが利用されるようになっている。半導体デバイスを用いたパルスパワー電源としては、例えばSi静電誘導型サイリスタ (Static Induction Thyristor : SIThy) を用いられている。しかし、パルスパワー電源では、高電流領域を使用するため、Siデバイスを用いた運用では導通時の損失が大きい。一方でSiC-BGSITを用いたことで、導通損失が小さくなると予想される。


 追加情報

初出展/New Exhibitor
Yes
新製品/New Products
Yes
製品展示/Displaying Equipment
No
デモンストレーション/ Product Demonstrations
No
産業・技術分野/ Industries/Technologies
パワー半導体/Power Semiconductors