酸化ガリウムは, ワイドギャップ半導体として期待されている材料であり, 導電性や発光特性, 触媒特性の観点から, ナノサイズ化が求められている. 従来, 酸化ガリウム粒子に限らず, 一般的な酸化物セラミックス粒子合成では, 合成のためには数百度の加熱(酸化ガリウム合成の場合は800℃以上)が必要で, またナノ粒子の合成には, 粒子成長を防ぐためのキャッピング剤が必要であり, 合成後には不純物の洗浄処理が必要であった.
今回, 高性能な酸化ガリウムナノ粒子を合成するための安価で省エネルギーである新しい合成手法を開発した.
新しく開発した酸化ガリウムナノ粒子の合成手法は, (1)金属ガリウムに超音波照射を行うことによって, (2)金属ガリウムナノ粒子を合成する. (3)高活性な金属ガリウムナノ粒子の特性を利用し, ヒドラジンを添加して室温で酸化させる. 従来は低温で合成した場合, 酸化物ではなく水酸化物関連物質が生成するが, ヒドラジンを添加することにより水酸化物の生成を抑制し, 金属ガリウムナノ粒子の直接酸化を可能にすることによって, 室温で酸化ガリウムナノ粒子を合成することに成功した. この手法は室温・常圧で合成が可能であるだけでなく, キャッピング剤の使用や洗浄が不要で, 200nm程度のナノ粒子の高スループット合成が可能になった. これらの合成時の環境負荷・エネルギーの低減により, 従来手法の1/3以下のコストで製造が可能になった.