量子Inspired技術の一つであるアニーリング方式の全結合型イジング半導体システムの大規模化を実現するために、複数の集積回路(LSI)チップ用いたスケーラブル化技術の原理検証に成功しました。
組み合わせ最適化問題は私たちの身近にも数多く存在しています。
*創薬、新素材のきめ細かなシミュレーション
*即時の金融対応(銘柄ポートフォリオ)
*病床把握や可能なスタッフ把握と配置
*インフラとしての最安・最速無線通信路最適化
*製造ライン構築、割り当て
*受入れ病院や道路状況条件下の救急車搬送経路探索 などです。
しかしながら、従来コンピュータを用いて総当たり法で解くと膨大な計算資源が必要となります。この課題を解決できると期待されるのが、強磁性体の性質を表すイジングモデルに立脚した新しい計算手法です。これは、すべての状態を試すことなく(すなわち総当たりではなく)、強磁性体においてスピンが相互の結び付きに従って向きが揃い磁化が発現するという性質を、この問題の解法に応用する試みです。アニーリング方式として知られています。
これまで問題対応への汎用性が高いスピン間全結合方式に取り組んできました。今回、少数のチップ間接続本数で複数の全結合イジングLSIチップを全結合のまま結合でき、全体でひとつの全結合システムとして動作する大規模イジングLSIシステムをスケーラブルに構成する方法を提案し、17個のFPGAチップで構成した368個の全結合スピンを備えた実機システムにて原理実証を行いました。この技術は、アニーリング方式としては初めて全結合スケーラブル化を実現した成果です。なお、大学又は研究室として製品販売を行うものではありません。
将来的には、企業などと連携し、本技術を半導体設計技術の中核に発展させることをめざします。