フィルムベースエレクトロニクス,ヘッドアップディスプレイミラー,全固体電池及び,スピントロニクスのような多層薄膜構造素子作製には,低ダメージスパッタ技術がますます必要とされる。
ハイブリッド対向スパッタ(商標第5584466号)を用いて,ITO透明導電膜作製においてスパッタ方法を工夫することで,
- 成膜中のスパッタ電圧が従来方法での260 Vから新規方法では100 Vへと,160 Vもの大幅な低電圧化
- Arガスのみの基板加熱無しAs-depo成膜で,室温での抵抗率ρ=5.2x10-4Ωcmと低抵抗率化
を同時達成した。この実験結果以外にも,低ダメージスパッタの検証となるリフトオフプロセスにより作製したLED電極用低抵抗率ITO薄膜作製についても紹介する。
本手法のハイブリッド対向スパッタは,ヘッドアップディスプレイミラー向け材料,全固体電池向け材料や,光エレクトロニクス,スピントロニクス利用向けの磁性ガーネットのような多元素系材料でかつ多層薄膜構造素子の作製において,
a) 真空を破らずに容易にプラズマ状態・スパッタ電圧をその材料に最適な状態に設定・制御
b) 高エネルギー粒子の基板衝撃効果の抑制を促進して低ダメージかつ高速成膜
できるという点で非常に有効であると考えられる。
従来のハイブリッド対向スパッタのカソード構造(特許第5555848号)を発展させた,展示予定の新規考案のハイブリッド対向スパッタのカソード構造(特許出願済)は,In-situ最適プラズマ状態の設定・制御&低ダメージ&高スループット&高安定性の特徴に加えて,可動部分が無くコンパクトな形状を特徴とし,多元ターゲット或はロータリーターゲットへの組込が可能となる。