横浜国立大学 大竹研究室

横浜市,  Kanagawa 
Japan
http://ohtake-lab.org/
  • 小間番号1027


周辺の振動や衝撃からエネルギーを創り出す発電デバイス ~ワイヤレスかつメンテフリーなIoTデバイスの実現を目指して~

リアルタイムのモノの情報をインターネット空間に取り込むIoTデバイス(IoT:Internet of Thins)は、産業、インフラ管理を自動化・高度化させるために、また、便利で、安心・安全な生活を実現するために、必須なものとなりつつあります。IoTデバイスの需要は、急激に増大しつつありますが、あらゆるシーンで普及させるために、設置と管理の容易性の観点から、デバイスのワイヤレス化、そして、メンテナンスフリー化が主要技術課題となっています。この課題を解決するためには、センサと無線モジュールに、自らエネルギーを作り出す環境発電デバイス(エネルギー・ハーベスティング・デバイス)を組み合わせることが有効です。

Society 5.0時代を迎えようとする現在、センサの種類や用途は多岐にわたっており、発電デバイスにも多様性が求められています。振動や衝撃はエネルギー密度が比較的高く(振動:mW/cm2オーダー,室内光:μW/cm2オーダー)、機械や人の動作、自然現象などによりこれらがセンサ近傍で発生する場合、昼夜を問わず、暗い場所でも電力を取り出すことが出来る振動発電が候補となります。例えば、工場では、微小振動を伴う様々な機器や装置が稼動しています。このような機材に振動発電デバイス、センサ、無線モジュールを組み合わせたIoTデバイスを取り付ければ、振動や温度などの計測を通じて、機材のオンライン監視が可能になります。他にも、リモコン等のスイッチの電池レス化、不審者によるドア開閉や窓破り検知による建物の防犯、橋やトンネルなどの構造物の異常応力検知による事故防止、大雨に伴う土砂の微小移動検知による災害発生の予兆通知などへの適用が挙げられ、振動発電デバイスの普及による産業的および社会的波及効果は大きなものとなります。

当研究室では、センサ近傍で発生する振動や衝撃からエネルギーを作り出す振動発電に着目し、特に、デバイスの高出力化、小型化、量産化、低コスト化を考慮した材料開発、材料形成技術、デバイス設計を行っています。発電方式としては、磁性材料の逆磁歪効果という現象を活用した磁歪式、および、これまでとデバイス駆動原理が異なる新しい電磁誘導方式を対象としています。いずれも、磁性材料の周囲にコイルを設置し、電磁誘導により発電を行います。これらの方式のメリットとして、発電デバイスの内部抵抗が小さく、デバイスの構造設計やサイズによりミリボルトから10ボルト程度以上までの幅広い大きさの電圧を供給できる、脆性材料を用いていないため耐久性が高い、また、数百度程度では特性が変わらない磁性材料を用いているため動作温度域が広い、といった特徴が挙げられます。

本研究開発では、材料物性および物理現象の原理に基づいて、使用材料の選定と特性最適化、および、デバイスの設計を行っています。また、従来のバルク材料ではなく、膜材料を利用することを新規に提案しており、これにより小型化、量産化といった点で有利になります。更に、磁束を還流させる必要がないデバイス構造を実現し、その結果、梁材料にも任意の材料を使用することが可能になりました。デバイスサイズや振動条件によるところもありますが、現時点において5 V以上の出力が得られるものも試作しています。ご興味がございましたら、ぜひ、お立ち寄りください。

本研究の成果の一部は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成を受けて行っている事業(20002152-0)により得られたものです。


 出展製品

  • 試作振動発電デバイス
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  • 試作振動発電デバイス

  • 振動発電デバイスによって点灯させたLED
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  • 振動発電デバイスによって点灯させたLED