東京農工大学 荻野研究室

小金井市中町,  東京都 
Japan
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  • 小間番号7609

様々な階層で特殊な構造を示す高分子を有機半導体デバイスに応用し、構造と物性の相関に関しての研究をしております。

 東京農工大学荻野研究室では様々な階層で特殊な構造を有する高分子を合成し、有機半導体デバイスを中心とした各種機能性材料へ応用する研究をしております。複雑系高分子の構造と物性の相関を理解することが大きな目標です。研究成果の中で下記の項目に関して紹介させていただきます。

1)ポリ(3-ヘキシルチオフェン)のような共役系高分子と電気的にイナートなブロック共重合体の正孔移動度
  第2成分としてポリスチレンを導入したブロック共重合体薄膜で正孔移動度が100倍以上増加した。DSCや固体NMRから存在が示唆されるリジッドアモルファス領域が正孔移動度の向上に寄与すると考えております。n型の共役系高分子においても、ブロックやグラフト共重合体とすることで、電子移動度が向上しました。
E. Tomita et al., Macromol. Chem. Phys., 219, 1800186 (2018), E. Tomita et al., Materials, 11, 343 (2018)

2)1)の共重合体の有機薄膜太陽電池への展開
  フラーレン誘導体とのコンポジットとして有機薄膜太陽電池の活性層に応用しました。ブロック共重合体を用いることで、相分離構造の微細化とモルフォロジー制御が可能となりました。変換効率も向上しました。ポリジメチルシロキサンとポリ(3-ヘキシルチオフェン)のブロック共重合体では、両ブロックの結合部位にペリレンジイミドを配置したブロック共重合体も合成し、増感作用、結晶化を促進する効果が観察されました。
Z. Gu et al.,Polymers, 3, 558 (2011). Z. Gu et al., J. Polym. Sci. Part-A: Polym. Chem., 49, 2645 (2011), K. Tsuchiya, Polymer, 92, 125 (2016), K. Ogino et al., Kobunshi-Ronbunshu, 76, 163 (2019) (in Japanese),

3)有機電界発光(EL)素子への展開
  ポリフルオレンとポリトリアリールアミンからなるブロック共重合体を合成し、EL素子の活性層としました。ポリフルオレン単独の素子と比較して発光効率が向上しました。また、オキシエチレン基をポリアリールアミンの側鎖に導入することで、陽極近傍に偏在させることに成功しました。また、このブロック共重合体の結合部位にオレンジ色発光部位を導入したブロック共重合体を合成しました。青色発光を示すポリフルオレノンとのブレンド体を活性層に用いることで白色発光素子を実現しました。
Y, Tan et al., Polymer, 53, 1444 (2012), Y. Tan, Chem. Lett., 41, 257 (2012), K. Kim et al., Polym. J., 49, 721 (2017). K.Kim et al., J. Appl. Polym. Sci.134, 45393 (2017) 

4) フォトリフラクティブ(PR)材料への展開
 電気光学的に活性な部位と正孔輸送性部位からなるブロック共重合体を合成し、フォトリフラクティブ特性を評価しました。対応する統計的な共重合体と比較して、結合利得係数、回折効率ともに大きくなることを見出しました。機能分離型のPR材料として初めての例です。また、ポリトリアリールアミンにポリアクリル酸エチルがグラフトした共重合体をPRホストとして利用したところ、ポリトリアリールアミンの高い光導電性を反映し、高速応答が観察されました。
K. Ogino et al., J. Photopolym. Sci. Technol., 19, 419 (2006), Z. Cao et al.,  Polymer, 54, 269-276 (2013)