本研究では,非熱可塑性PIフィルム同士を特殊な前処理,接着層,可溶着化のための添加剤が不要な溶着技術を開発しました.
【従来技術の課題】
ポリイミド(PI)は,熱的耐性や化学的耐性等が優れている樹脂として周知されているものの,熱分解温度と融解温度とが極めて近いという特徴を有しており,加熱しても融解する前に炭化してしまう等の理由から,溶着(直接接着)が難しい材料と考えられてきました.このため,PIを接着する際には,接着前に表面プラズマ処理を施す方法や,接着剤を用いた方法等が採用されていました.
【本研究の特長・既存技術との比較】
特別な前処理が不要 本接着方法を採用することで,表面プラズマ処理等の前処理なしで簡単に,PIフィルムを接着することができます.
接着剤を用いないことによる性能向上 PIの接着に接着剤を用いた場合,その接着物の性能(熱的耐性や化学的耐性等)は接着剤の性能に制限されてしまうところ,本接着方法では接着剤を用いないため,その接着物の性能をPIの性能に近づけることができます.
想定用途 ・電極をPIフィルムで挟み込んだフレキシブル配線基板(あるいはフレキシブルフラットケーブル) ・熱膨張係数が異なる複数のPIフィルムを積層したアクチュエータ(特願2023-181691参照) ・PIフィルムを袋状につなぎ合わせた、宇宙空間等でも利用可能なエアバッグ 等
メッセージ 本溶着技術は駆け出しの技術であり,広く応用先を探しています. 「これ着く?」といった雑談からでも,お気軽にお問い合わせください.
【参考資料】 NEDO若サポ: https://wakasapo.nedo.go.jp/seeds/seeds-2031/ JST新技術説明会: https://shingi.jst.go.jp/list/list_2024/2024_okayama-u.html