東レのポリイミド材料は、その高い信頼性から半導体素子の保護膜や絶縁膜用途に長年ご使用いただいています。1970年に耐熱絶縁ワニスを上市後、半導体素子の保護膜・絶縁膜用途に非感光性ポリイミドワニス セミコファイン™を1979年に、感光性ポリイミドワニス フォトニース™を1985年に上市しました。現在、ワニスタイプとシートタイプ(ファルダ™)、非感光性タイプと感光性タイプという幅広い製品グレードを取り揃えております。また、近年は、ハイブリッドボンディング用絶縁膜やガラスコア基板用TGV充填樹脂などの実装材料、さらにウエハ薄膜化工程対応の仮貼り材料や厚膜対応のハイアスペクト感光性材料も新たに開発しています。
【ハイブリッドボンディング用絶縁膜】
半導体パッケージの高密度化や多層化が進む中で、ハイブリッドボンディングは、チップ間の微細な電気的接続を実現するために必要とされています。従来の接合技術では、接合温度の高さや材料間の密着性、ボイド(空隙)発生、チップの反りなどが課題でした。
今回開発したハイブリッドボンディング用絶縁膜は、250℃以下の低温で接合できることが大きな特徴です。これにより、熱によるデバイスへの負荷を軽減し、工程の柔軟性が向上します。また、SiO₂、Cu、ポリマーなど多様な材料に対して優れた密着性を発揮し、安定した接合品質を実現します。実装信頼性評価であるDaisy chainテストにおいても、Cu-Cu接合の歩留まりが概ね100%であることが確認できております。さらに、絶縁膜がパーティクル(微粒子)を包埋することでボイドの発生を抑制し、チップの反りも低減できるため、信頼性の向上に寄与します。これらの特性は、先端半導体の高集積化や高性能化を支える重要な要素となっており、ハイブリッドボンディング技術の普及とともに、今後ますます需要が高まると考えられます。
【ガラスコア基板用TGV充填樹脂】
ガラスコア基板は、半導体パッケージの高密度化や高周波対応が求められる中で注目されている技術です。高い寸法安定性や絶縁性、低誘電率などの特長を持ち、次世代半導体パッケージの信頼性向上と高性能化を支える重要な役割を果たします。しかしながら、ガラス特有の脆さからクラック(ひび割れ)が生じやすいという課題があります。そのため、加工時の熱負荷や応力を抑える材料開発が重要です。
今回開発した低溶融粘度のシート材料は、120℃以下という低温でラミネートが可能であり、ボイド(空隙)が発生させずにTGV(Through Glass Via)へ均一に充填することができます。これにより、ガラス基板にクラックが生じるリスクを低減しつつ、工程の柔軟性と歩留まり向上や安定した電気的接続と高品質な実装が可能になると期待しています。このような材料技術は、ガラスコア基板の信頼性向上と高性能化を支え、次世代半導体パッケージの発展に貢献できると考えております。
【ウエハ薄化向け仮貼り材料】
本材料は、高弾性率ポリイミドを主成分とし、ウエハの薄膜化と厚み均一性を高いレベルで両立できる点が特徴です。半導体製造において、ウエハの薄膜化はデバイスの高集積化や性能向上に不可欠ですが、薄膜化工程ではウエハの反りや厚みのばらつきが課題となっていました。今回開発された新材料は、ポリイミドの高弾性率を活かすことで、ウエハ全体の厚み均一性を向上させ、極限まで薄くすることが可能となり、HBM(High Bandwidth Memory)やロジック半導体など、先端パッケージング分野への展開が期待できます。
本材料は、弾性率を当社従来材料比で2.5倍に増加させたことで、バックグラインド工程中の半導体プロセス材料の変形が抑制され、ウエハにかかる圧力が均等になり、12インチウエハにおいて薄化後のTTV(Total Thickness Variation:ウエハの最も厚い部分と最も薄い部分の厚みの差)を1.0μm未満に抑えることに成功しました。さらに、本材料はPFASフリーおよびNMPフリーにも対応しております。今後は、既存の量産インフラを活用して量産体制を整え、2028年までの量産化を目指します。
【厚膜×ハイアスペクト材料】
フォトリソグラフィー法を用いて最大膜厚500um、アスペクト比36で加工可能なネガ型感光性材料です。ポリイミドの高い信頼性(耐熱性、耐薬品性、機械強度、絶縁性、X線耐性)を活かして、半導体/電子部品向けの絶縁材料やMEMSデバイス向けの構造材料への展開が期待できます。ネガ型フォトリソグラフィーによる微細加工が可能で、露光パターンにより自由な形状で一括した加工ができます。ラインナップとしては、厚さ500umまで対応可能なSTF-1000とPFASフリーのSTF-2000がございます。
【ポリイミドコーディング材】
ポリイミドコーティング材料には、大きく分けて非感光タイプのセミコファイン™と、感光タイプのフォトニース™がございます。優れた耐熱性、耐薬性、絶縁性から、半導体、電子部品の保護膜、絶縁層用途で多数の採用実績がございます。また、NMPフリー、PFASフリー品もラインアップしております。
フォトニース™ は、ポリイミド系耐熱樹脂と感光性制御において独自の設計技術を結集して開発した感光性ポリイミドコーティング材料です。用途に応じた多様な製品を保有し、ポジ型“PWシリーズ”“LTシリーズ(低温硬化可能)”、ネガ型“PNシリーズ(低温硬化可能)”などのラインナップがございます。保護膜や再配線用途として長年ご使用いただいております。
セミコファイン™ は、ポリイミド系耐熱樹脂において独自の設計技術を結集して開発したポリイミドコーティング材料です。用途に応じた多様な製品を保有し、長年にわたり多くの保護膜、絶縁膜として長年ご使用いただいております。
【ポリイミド系感光性接着剤フィルム】
東レの感光性ポリイミド技術とシート加工技術を活かして開発されたネガ型フォトレジスト材料で、永久膜用途にご使用いただけます。再配線用途やキャビティ形成用途に適したLPAシリーズと、5G関連用途に適した低誘電/低誘電正接材料がございます。
LPAシリーズは、厚膜で高解像性を実現し、非平滑基板への埋まり込み性にも優れています。さらに、ポリイミド由来の高耐熱性と低温キュアを両立し、PFAS/NMPフリーの提供も可能です。低ストレスタイプ、高弾性タイプ、フォトリソ後に再接着可能なタイプなど、幅広い選択肢をご用意しています。
低誘電/低誘電正接材料は、非感光タイプのLDAシリーズとネガ型感光タイプLPDAシリーズがございます。両シリーズとも、20GHzで誘電正接0.002以下を実現し、ポリイミド由来の高耐熱性に加え、高強度および高弾性であることが特徴です。